先ごろ来日されたブータン国王が提唱した「国民全体の幸福度」を示す“尺度”で。
GNH(Gross National Happiness) というGNPで示される金銭的、物質的豊かさとは異なる
精神的な豊かさを目指すという考えから生まれたそうです。

2005年5月末に行われたブータン政府による国勢調査では、
「あなたは今幸せか」という問いに対し、45.1%が「とても幸福」、
51.6%が「幸福」と回答があったということ。

また先日(12/16日放送)のミヤネヤでもブータンの街行く人に「幸せですか?」の
質問に50人が50人(その主観的幸せ度は違うでしょう)が、「幸せです」
と答えていました。

放送の中での家庭の様相は、質素そのものではあるが、家族の絆という点で
強いものを感じました。

そしてそのGNHは、9つの構成要素があります  1.心理的幸福、2.健康、3.教育、4.文化、5.環境、
6.コミュニティー、7.良い統治、8.生活水準、9.自分の時間の使い方です。

近年ある金融機関が日本における豊かさの1990年と2007年の比較によるとGNHは1割程度
あがったそうです。

90 年から 07 年にかけて、日本のGNH(日本の豊かさ)を押し上げたのは、
2.健康、3.教育、9.時間、5.環境の 4 分野、押し下げたのは、8.生活水準
1.心理的幸福の 2 分野、どちらの方向にも作用しなかったのが
6コミュニティと7.良い統治であった。
犯罪や生活保護者の増加、精神疾患患者や自殺者の増加など、昨今問題とされている点は、
やはりGNHにはマイナスに働らいていて1990年比特に心理的幸福感が低くなっていました。

やはり今後は、精神的健康についての教育も取り入れてゆくことも重要ではないでしょうか。

近年の傾向として、うつ的傾向や目標の欠如、自尊感情の低さ
将来への不安、人間関係不安、根拠のない不安などの方が多くなっているように感じます。

心理的幸福感はある程度心的態度(心の持ち方)にも起因します。

一例を取りますと子存じの方も多いと思いますが、「足るを知る」という考え方は非常に重要で、
幸せになったら感謝すると考えると幸せ事態の定義も名詞化してしまっているので、いつまでたっても感謝する心が生まれずらいと思います。

感謝するから幸せなんだというように考えればいろいろな身近なものにも感謝できると思います。
自然・暮らし・食べ物など
健康・家族・仕事・お金などあるときはあまり感じないが、病気になってあらためて健康を知るですとか、
いろいろあると思います。

幸福感を持つとは、そういったところに前もって気づける心の在り方でもあると思います。

また幸せという言葉から満たされるということを意識するようになると理解は変わってきて、
出来事や状況の良し悪しに左右されづらくなります。
悪い出来事に遭遇しても誰かにやさしくされれば心は、満たされてきます。
また良い出来事が起きた時には、他人とその喜びを共有してもらえれば、やはり心が満たされます。

このようなことはまわりとの絆でもあり、人の温かさでもあると思います。


しかしただ「足るを知る」だけでも良いのですが、

さらに進化という部分でとらえると、
現状に満足しながら目標に着実に進むという考え方がより幸福感を生む心の持ち方だと思います。


心の健康も筋肉のように鍛えれば、強くなるということが近年の脳科学の分野でもわかってきています。
脳の神経可塑性という特性です。

そういった幸せになる心の持ち方について、カウンセリングなどを通してお手伝い出来ればと思います。


 

免疫力を高めるにはいろいろな方法が言われています。

※ 但し、これを実施したからといって、個人個人によって必ずしも効果が出るものではありません。

(量・習慣化・頻度・それぞれの方の体調・状況・嗜好など)

科学的エビデンスもあるものと、ないものがありますので、ご理解、ご注意の上ご活用ください!!

  • なるべく規則正しい生活
  • 体を動かし運動
  • 水の補給を怠らない。
  • 温泉・森林浴
  • アロマテラピー 
  • サプリメント
  • ヨガ
  • 瞑想
  • 腹式呼吸
  • バイオフィードバック
  • 指圧
  • イメージ療法
  • アニマルセラピー
  • 食事をおいしく食べる。
  • ヨーグルトや納豆など
  • 太陽の光を浴びる
  • 笑いの効用は、実証されています。
  • まじめすぎるのも免疫機能の敵 気楽に
  • なんでも話せる友人を持つ
  • 気分のいいことをイメージ
  • 調子が良くても定期的に休む

                   など


ポジティブ心理学とは、精神病理や障害に焦点を絞るのではなく
楽観主義やポジティブな人間の機能を強調する心理学の取り組みです。
マーティン・E・セリグマン アメリカ心理学会(APA)の会長が1998年に会員へのニュースレターにポジテイブ心理学の基本的な方向性を示したのが、始まりとされています。

フロー(精神的に熱中して、ハイな状態)になると脳内モルヒネが多く出る実験結果もあります。
満足感、幸福感、集中力、楽しさが増える。
フロー状態でストレス、不安、恐怖が減る。
ポジティブ、笑いや楽観主義が、ナチュラルキラー細胞の増加をもたらし、免疫力を高める。
ポジティブ感情は、ネガティブ感情の生態への影響を除去する働きがあります。(フレデリクソン 2000) 元通り効果。

ポジティブな感情状態にある人は、課題の学習も早くパフォーマンスもよい。
またさまざまな情報に関する好奇心の強さや解放的な知的な資源を多く持っています。
社会的な関係性をきづきやすい。

ポジティブ感情がウエルビーイングを高めるということは、実証されています。

援助、親切行動を1日一回以上行ったものの主観的幸福感は増加していた。

年収500マン以上の群では、年収と人生の満足度とは、無関係である。
GNPが日本の半分以下のブラジル、アルゼンチンのほうが、はるかに満足度が高い。

自分だけでなく他者を喜ばせることにより、自分の満足度が高まってゆく。

楽観的な人ほど主観的健康感が高い。

平均的に他者よりもネガティブな現象が本人には、生じにくいというバイアスがあります。

日本人には、自己卑下的、自己批判的バイアスが、アメリカ、欧州などに比べて高くなっています。
それは恥、謙遜、謝罪の文化でもあるともいえます。

ポジティブ構成要素としては

勇気、正義、人間性と愛、節度、超越性、智慧と知識などがあります。

プラセボ効果、ピグマリオン効果など実際に応用できる科学的な効果が今後期待されます。


 

ポジティブ心理学の研究領域の中でも、研究が集中的に行われているのは、ポジティブ感情領域に対する研究である。
実験室などで楽しい映像を見せたり、陽気な音楽を聞かせたり、キャンディなどのギフトを与えたり、楽しいシナリオを読むなどするとストレスホルモンに変化がでることがいわれている。
しかし、ポジテイブ感情には、注意力を低下させ、浅い情報処理をもたらすことも指摘されている。
それはポジティブ感情が報酬を過大評価し、リスクを過小評価するという指摘もあるからである。
ということは、使い分けが必要であるともいえる。
しかしながらポジティブ心理学に関する研究は、認知や情報処理の領域を含めて、ポジティブ感情が想像以上に多様な恩恵をもたらすことを明らかにしつつある。

それは、ポジティブ感情は、刺激項目への類似性への注意や認知を高めることが指摘されあるカテゴリーには通常含まれない項目に対して、類似性をとらえ範疇化する傾向がある(Isen 1993)。
また、ポジティブ感情の高まったものは、そうでないものより、より多くの違いをとらえることも指摘されている。
総合するとポジティブ感情は、注意を広め、全体的な認知や処理能力を高め,ネガティブ感情は、注意を狭め、局所的な認知処理能力を高める。(Fredrickson 2005)

参考文献:日本パーソナリティ心理学会 2006 

 

認知行動療法

認知行動療法は、ベック(Beck,A.T.)の認知療法、マイケンバウム(Michenbaum,D.H.)
のストレス免疫訓練、エリス(Ellis,A.)の合理情動行動療法など、
それぞれ別個に
提唱され発展してきた新しい行動療法の総称です。

現在米国心理学会認定の臨床心理士養成大学院では、8割のコースが認知療法を実習に取り入れ、半数のコースが、認知行動療法を最も主要な技法としています。
イギリスでも英国心理学会認定の臨床心理士養成大学院では、認知行動療法が最も主要な技法となって います。 

認知行動療法と言いますのは、抱えている問題を「認知(考え方)」を通して別の角度から見たり、思い込みを修正してゆく手法です。

それは、そもそも性格を変えるというのではなくて、「物事の受け止め方」をかえるという 手法です。
人は無意識のうちに数
万回もの思考をしていると言われています。

そのうちの問題のある思考を変えられれば、目に見えて精神的変化が生まれます。

 心理療法は、認知行動療法のような現実指向的なものが有効であるということが分かってきていて、薬物療法と心理療法の併用が有効というデーターが出てきています。 

また近年、不安や恐怖が中心となっているような症状、たとえば社会不安障害、強迫性障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、恐怖症などに対する心理療法では、認知行動療法が有効であるという報告が数多くみられるようになっています。

認知行動療法は、問題のある思考パターンを修正していきます。
 

1. 「すべき思考」
何かをする時に「・・すべきだ」とか「・・しなくてはならない」と必要以上に自分にプレッシャーをかけてしまう。

2. 「全か無か思考」
完全な成功でないと満足できない。
少しでもミスがあると「すべて失敗」と思い込み全否定する。

3. 「こころの色眼鏡」
良い面は視野に入らず、悪い面だけを見てしまう。

4. 「レッテル貼り」
ミスをした時に冷静に理由を考えずに「ダメ人間」「怠け者」などと否定的なレッテルを貼ってしまう。

5. 「感情的な決め付け
自分の感情を根拠にして物事を判断してしまう。

6. 「結論の飛躍」
根拠に基づかずに悲観的な結論を出す。

悲観的占い:根拠もなく悲観的な未来を信じ込む。

7. 「マイナス思考」
なんでもないことや、どちらかと言えば良いことなのに、悪くすり替えてマイナスに考えてしまう。

8. 「拡大解釈と過小評価」
自分の欠点や失敗を過大に捉える一方で、自分の長所や成功をいつも「取るに足らないこと」と思ってしまう。

9. 「過度の一般化
一つの失敗や嫌な出来事だけを根拠に「何をやっても同じだ」と結論づけたり、この先もずっとそのことが起きると考えてしまう。

10. 「自分自身への関連づけ」
問題が起きた時に、様々な要因があるにかかわらず「すべて自分のせいでこうなってしまった」と考えてしまう。

これらの自分の自動思考(パターン)とその背後にある認知、そしてその「歪み」を探し出し、発見します。
そして、繰り返し現れる自動思考、特徴的な自動思考から、問題のある「スキーマ」(絶対的信念)をあぶり出します。
それが判明したら、それを修正するようにします。
というような一例の手法で、ある程度カウンセリングを受ければ、個人でもできるようになります。
すこし難しく書いていますが、実際は基本的なリフレーミングや認知行動療法カードにてわかりやすくカウンセリングを行います。  

 

認知行動療法.bmp
認知行動の図.bmp

自分がもともと信じていることを容易に変えられないということに人間には、自分が正しい、自分には一貫性があると思いたいという欲求があることが知られています。

この現象は、合理化とも言われています。

その有名な例では、イソップ童話のキツネの話で、ぶどうを食べたかったキツネは、あれは「酸っぱいぶどうさ」とつじつまを合わせたのでした。

 そしてほかには「甘いレモン理論」というものもあります。
これについては、どんなレモンが酸っぱかろうと、自分のものは、甘いと思い込もうとするというものです。 人は、自分の持っているものがより良いものであると考えたがるということが統計的にも言われています。
手に入れたものが、 想像とは違っていた場合には気分ちが落ち込みます。
そういったことを、避けようとするのが甘いレモン理論です。
社会心理学者のフェスティンガーは、この種の過程を、認知的不協和理論として体系づけて説明しました。
認知的不協和とは、個人が心理的に相いれない2つの認知を同時に持っている時の緊張状態で、それを低めようと動機づけます。
前のキツネの例では、おいしそうという認知と届かないという認知を取り消して、酸っぱいに違いないと変更して不協和を解消したと説明出来ます。
だれでも不都合なことは認めたくないが、これがエスカレートすると「人のものも自分のもの」、「人の迷惑も関係ない」、「人を蹴落としてでも自分が」などととんでもない考え方になりかねなくなることもあります。

ストレスマネジメント

ストレスに対処するためには、いろいろな方法があります。

今回は、音声フアィルにてストレスの仕組みとその対処方法について案内させていただいています。

  ストレスマネージメントについて.mp3              8分程となっております

 コーピングスキルとは、ストレスに対応する技術のことを言います。
コーピングは、外界から与えられる刺激 
( ストレッサーと呼ぶ)によって喚起される、情動的反応や身体的変調を低減するため、あらゆる認知的・行動的努力です。
そしてストレスと上手に付き合うためには、コービングスキルのレパートリーを増やし、適切な選択により実行できるようになることが重要です。

たとえば PTSD(posttraumatic stress disorder) の脆弱性に関する研究で、PTSDは、事故や事件など危機的な出来事が誘因となって生ずる心理的障害でありストレス反応の極端な例であります。
しかしながら、同様な 危機的出来事を体験してもPTSDを生じる人とそうでない人が知られていまして、どのような要因が
PTSDを生じやすくするのかが研究の論点となっています。(Brock et al ,2001)

白波 瀬(2002)は、PTSDのリスクファクターとして

①生物学的・遺伝的要因 ②心理学的要因 ③環境的要因 ④認知的および対処的要因を挙げています。

心理学的要因については、自己効力感や自己コントロールの高さが発症に対し予防的に作用します。

環境的要因は、家族の適応状態が好ましくないことや援助的資源がないことがリスクをたかめるといわれています。

認知および対処要因については、その出来事をどのように理解し受け止め評価するかやストレスに対するレパートリーの広さがPTSDに影響を与えることが知られています。

コーピングには、ラザラスが提唱するストレスコーピングの2種類で、情動焦点型コーピングと問題焦点型コーピングに大別されます。

情動焦点型コーピングは、回避や静観、気晴らしなど、ストレス状況に置かれたときに生じるネガティブな情動そのものを軽減しようとするコーピングであるのに対し、問題焦点型コーピングは、問題の所在の明確化や情報収集、解決策の考案など、問題解決のための環境や自分自身を積極的に変化させようとするコーピングです。

情動焦点型は,、多く用いてほしい方法と用いることを避けてほしい方法があります。

その中の積極的認知対処は、自分自身の感情をコントロールしたり、ストレスとなる出来事に肯定的な意味を持たせたりといった認知行動療法の一つの技法として確立されています。

また、問題解決型はストレス状況を変えるための問題対処中心による努力や、問題解決するために状況分析を行う対処です。
この方法を用いる人は、あまり用いない人と比較して同じ出来事を経験してもストレスと感じづらく、したがって抑うつ的になったり 、不安に感じたりすることが少ないと言われています。

その状況、その方々ごとに教育、習得、ワークを行っていきます。

日本語版 WCC コーピングスケールとしていろいろな選択肢がありますが、経験、

コーピングとの相性、熟練度により組み合わせや手法が変わります。 

問題解決

  • 経験に照らし合わせて解決方法を考える。
  • 出来事の状況をもっと詳しく調べる。
  • 問題解決のために積極的行動に出る。
  • 良い結果を生むことがあれば、全力でそのことに集中する。
  • あきらめてしまわず、なにか可能性を見つける。
  • 計画を立てて実行する。
  • あわてずゆっくりと行動する。
  • 何か状況を変えて、ことがうまく運ぶようにする。
  • 1つ1つ物事を処理していく。
  • 解決するための努力が足りないと考え、いっそう努力する。
  • いろいろな問題の解決法を試みる。
  • 自分の望みを叶えるために努力をし続ける。
  • 自分自身を変えて問題を何とか解決する。
  • 専門家に相談してその指示に従う。

積極的認知対処

  • その出来事にプラスの面を見つける。
  • 一歩退いてその出来事を見直す。
  • どうにかなると考え心配しないようにする。
  • 妥協して困った出来事の中にも何か良いことを見つける。
  • 自分自身を成長させたくましくする。
  • 最良でなくその次に良いことでも受け入れる。
  • 苦労を良い経験として活かす。
  • 物事の処理を妨げないように、心を落ち着けるようにする。
  • 睡眠を多くとり休養する。
  • スポーツなどで気分転換する。

ソーシャルサポート

  • 友達に相談する。
  • その問題について誰かに話して情報を得る。
  • 誰かに共感や理解を求める。
  • 問題の解決を手助けしてくれる人に相談する。
  • 信頼できる人にアドバイスしてもらう。
  • 誰かにそのことについて聞いてもらう。

自責

  • 自分自身を責める。
  • 自分自身を批判する。
  • 問題の責任は自分にあると考えるようにする。
  • 自分がもっと強い人間だったらと考える。

希望的観測

  • 誰かが助けてくれることを願う。
  • 奇跡が起こることを望む。
  • 嫌な経験が消えてしまえばと考える。
  • 良い時のことばかり思い出している。
  • ああなったら、こうなったらと仮定のことばかり夢見ている。
  • 非現実的なことを考えて気分転換する。

回避

  • 人にあたって気分を紛らわす。
  • 食べることで緊張を和らげようとする。
  • 急場さえ切り抜ければ何とかなると考える。
  • 問題を回避できなかったことを後悔する。
  • 問題の原因である人に腹を立てる。

問題解決、積極的認知対処は、できるだけ多く用いることが好ましい対処方略で、抑うつや不安感を減少させます。後者は、認知行動療法の技法のひとつとして確立されています。

ソーシャルサポートは、ストレスとなる出来事に対していろいろな情報を得たり感情的な面で、いろいろと他の人からの支えを求める情緒中心対処における行動的努力です。

その他の3つの方法(自責・希望的観測・回避)は、不安感や抑うつ感を増強させる好ましくない方法です。(nakano,1991c)。
しかし回避に限り用いることが有効なストレツサーもあります。
大切な人の死、末期がんがみつかるなどです。(ストレスマネジメント入門 2005 中野)

 少し複雑になってきますが、複合的解決法も検討されています。

これまでの多くのコーピングスケールを理論的に整理して集約したものもあります。  

1.関与−回避 態度は積極的に関わるか、回避しようとするか

2.問題−情動 ねらいは問題解決か、気持ちの安定か

3.認知−行動 方法はどうするか考えるか、行動に移すか

情報収集:関与・問題・行動

 既に経験した人から話を聞いて参考にする

 力のある人に教えを受けて解決しようとする

 詳しい人から自分に必要な情報を収集する

計画立案:関与・問題・認知

 原因を検討し、どのようにしていくべきか考える

 どのような対策を取るべきか綿密に考える

 過ぎたことの反省をふまえて、次にすべきことを考える

カタルシス:関与・情動・行動

 誰かに話を聞いてもらい、気を静めようとする

 誰かに話を聞いてもらって冷静さを取り戻す

 誰かに愚痴をこぼして、気持ちをはらす

肯定的解釈:関与・情動・認知

 悪いことばかりではないと、楽観的に考える

 今後は良いこともあるだろうと考える

 悪い面ばかりでなく良い面も見つけていく

放棄・諦め:回避・問題・認知

 自分では手におえないと考え、放棄する

 対処できない問題であると考え、あきらめる

 どうすることもできないと、解決をあと延ばしにする

責任転嫁:回避・問題・行動

 自分は悪くないと言いのがれをする

 責任を他の人に押し付ける

 口からでまかせを言って逃げ出す

回避的思考:回避・情動・認知

 嫌なことを頭に浮かべないようにする

 そのことをあまり考えないようにする 

 無理にでも忘れるようにする

気晴らし:回避・情動・行動

 買い物や賭け事、おしゃべりなどで時間をつぶす

 ともだちとお酒を飲んだり好物を食べたりする

 スポーツや旅行などを楽しむ

参考文献(TAC−24) 神村ら(1995)

うつ病の臨床症状の背景には、将来に対する悲観的な評価や自己に対するネガテイブな評価など、

うつ病患者特有の認知機能障害がある(Beck.1979) これまで、うつ病患者において自分に関連した
ネガテイブな情報の記憶成績が高いことやネガティブな情動刺激に対する注意バイアスなどが数多く報告されており、これらのネガティブな認知と情動の相互作用が、うつ症状と結びついていることが明らかになっています。
また、報酬に対する感受性の低下や罰に対する感受性の上昇も示唆されており、うつ病の維持・憎悪に関与する複数の機能障害が明らかにされています。

うつ病に対する認知行動療法は、このような機能障害に対して、より柔軟な思考や認知の学習、行動を変化することで、うつ病の治療を目指す精神療法です。

具体的な方法には、日々の生活の中で自身の認知、情動、行動の記録をつけることで、うつ病の背景にあるこれらの要因の関係性を自己観察するセルフモニタリングや、ネガティブな認知にたいしてより適応的で現実的な認知の適応を行うことで情動制御をおこなう認知再構成、快活動の増加と回避行動の減少によって気分を改善する行動活性化などの技法があります。

実際の臨床では、さまざまな技法をいろいろ組み合わせておこなっています。

うつ病に対する認知行動療法の有効性は、大規模な効果研究によって確かめられており、薬物療法と同等の有効性をもつとされています(DeRubeis et al,2005)。

認知療法研究 4-2 sep.2011 より引用

アメリカの心理学者 カール・ロジャースにより提唱された心理療法の一つの流れである。

来談者に働きかけることを批判し、来談者に内在する成長の動機づけを全面的に信頼し、これを非指示的な治療態度と技法を用いることを提唱した。
クライアント中心療法と呼ぶ人もいる。

すべてのクライアントは、自分の問題をより適切に解決してゆく潜在力を持っている。
クライアントこそが主役であってクライアント自身が主導して治療者がそれを的確にフォローしてゆくことが課題である。面接そのものいま、ここでのあり方を尊重する。
感情の明確化と反射が主役で、より深い問題への認知へと直面するのを援助するという手法をもちいる。

基本的治療態度は、自己の真実の姿を見つめる真実性、無条件の肯定的配慮、共感的な理解の3つである。

実際にロジャースが、クライアントと面接しているビデオを見たが、非指示的には、かなり遠く突っ込んだ質問といいろいろなアドバイスも行っていた。
私もそうであるが、共に観賞したものの感想も一様に、ロジャースのイメージが、変わったと感想を述べていた。

行動理論とは、外に現れた行動分析対象とすることで、目に見えない人間の内面を明らかにしていこうとする考え方である。
その背景には、ビントが人の意識を探る手法として用いた「実験的内観法」に対するワトソンのデーターの客観性についての批判がありました。

これ以降、行動理論を支持する研究者たちは、古典的条件付け理論、オペラント条件付け理論、観察学習理論など、学習心理学の諸理論を基本原理としたS-R(刺激-反応)の連合による学習の成立を重視し、その理論を打ち立てていきました。

行動カウンセリングは、心理療法のように過去や無意識を掘り下げることをしない。
あくまでもその人の困っている問題・新しい問題に対して行動レベルで対処します。

その際、たとえばもつれた毛糸をほぐすのと同様にほぐしやすいところ(変わりやすいところ)を見定めてアプローチしていきます。

これはその問題がクライエントにとって主要な事柄でなくても、わずかでも問題の状況を好転させることにより、モチベーションを高め、自発的な行動変容を促す目的があるためであります。

行動理論の基本原則は、以下の9つです。

1.経験的心理学に基づいている。

2.問題を重視する。

3.問題を引き起こしやすい素質、誘発する状況、持続させる状況を区別する。

4.目標を重視する。

5.行動を重視する。

6.変容を促す行動の機能的活用の場を治療的環境だけに限らない。

7.透明性がある。

8.クライアントの自助を支援する。

9.常に進歩を目指す。(国分訳 1981)

です。
この考え方を発展させたのが認知行動療法です。
これはひとの行動を変容させるために、認知(物事の捉え方)の変容を促すという考え方にもとづいています。
それは、行動カウンセリングの幅を広げていきました。

心理学は、アプローチの仕方の違いで大きく5つにわけることができるといわれている。

知覚系、認知系、発達系、医療系、応用系である。

知覚系アプローチは、五感などの感覚で受けた刺激が、生理的興奮によって大脳中枢に伝達されるメカニズムの解明をおこなっている。

ここでは、刺激の反応速度や図形の見え方、感覚器官の構造や脳の情報処理など多岐にわたる。
たとえば光を感じたらボタンを押し、その時間差を測定したり、光の強さを変えたりという研究や、教科書でおなじみの盃−横顔図形や錯覚図形の研究は、感覚心理学や実験心理学でおこなわれている。
また神経系と大脳の情報の処理の仕方の研究は、知覚心理学や神経心理学があたっている。

自己刺激法による快中枢の発見や、視覚野のなかでの物の傾きに反応する神経細胞群の発見は、生理心理学の成果である。

これに動物との比較研究としての動物心理学もある。

また単なる刺激−反応だけの研究にとどまらず、視覚でいうと、相手の表情による認識の差、刺激を受けるこちら側の見ようとする欲求による違い、態度に関しても研究が進んでいる。。

主観的健康感に関する研究

今日においては,医学的な健康度だけで個人の健康を評価することは非常に難しい。
「健康とは,肉体的,精神的,そして社会的に完全に良好な状態であり単に疾病や虚弱さがないというだけでない」と世界保健機関
(WHO)で定義されている。

1946年にこのWHOによる健康の定義が紹介された当時は,健康要素に身体的,精神的要素に加えて社会的な要素が追加されていたことが高く評価されていた。
しかし中川
(1977)によれば,健康の定義が紹介された時は,これを測定することが出来ないという批判があった。
その後,その定義が含まれる概念を測定する技術が発達し,この定義が受け入れられるのに寄与した
(中川,1977)
こうして第二次世界大戦後はこの定義に基づき多くの健康指標が開発され用いられてきた。

わが国は戦後の高度経済成長を経て,人々の生活は豊かになり国民の寿命は伸びてきた。
そして生活様式や価値観の多様化した現代社会においては,身体的側面以上に健康の精神的,社会的側面の重要性,特に一人一人の生き方や主観性を重視した健康施策を検討する必要性が高まっている(三徳, 2008)
近年では自身の健康状況を自らが評価する指標として,主観的健康感(self-rated health )というの尺度を用いた健康成果が注目されている。
主観的健康感は医学的検査などによる客観的な健康度の調査が,困難な場合に,その代替え指標として,主に社会調査において活用されてきた。
客観的な指標は,専門家から見た評価尺度によって,健康状態を評価しようとするのに対して,主観的健康感は人々の主観的で自主的な判断に基づいて自己評価するところに特徴があると考えられている。
このように人々の健康の関心は,疾病から,生活の質
(QOL)といったポジティブな側面に重点が移り,QOL(Quality of Life 生活の質),生活満足度,主観的健康感などの,集団よりも個人レベルの指標が重要視されるようになってきた。
そして健康を促進するためには,これまでの病気の治療や予防という取り組みに加えて,今後は,「主観的健康」「幸福」「満足」「安寧」なども理解し把握する必要がある
(園田・川田,1995)

主観的健康感に関する,初期の研究は,1950年代後半より米国の老年学の領域ではじめられた。
米国では1972年以降のNational Health Interview Surveyの調査項目に主観的健康感に関する調査項目が導入された。
わが国でも1986年の国民生活基礎調査に主観的健康感が導入され今日まで続けられている。

わが国では,生命予後や生活機能を外的基準とした研究において主観的健康感が高いほど疾患の有無にかかわらず,生存率が高いこと,また生命予後の予測妥当性を持つことが明らかにされている(芳賀・柴田・上野,1991)

これまで主観的健康感と生存との関連を,年齢・世代別に観察した研究は少なかった。
いくつかの報告では関連性は高齢者のみでなく,若年層や中年にも見られること,85歳以上では関連が弱いことが示された(三徳,2008)

高齢者においては,主観的健康感が高いほど生活満足度が高いこと(Larson1978),また,健康状態の感じ方や生活満足感,健康に対するイメージは,健康にかかわるライフスタイルや生活習慣,生活行動に影響を与えるものであると報告されている(小笠原・渡邊・煙山,2005a)

高齢者においては,主観的健康感と生活満足度の相関は,認められている(小笠原・渡邊・煙山, 2005b)。

統合失調症という病名は、1911年にスイスのブロイラーによって提唱されました。
この病気は、思春期青年に発症し原因が不明の精神病といわれています。
発症率は、日本では、0.7%と言われています。
それは、人格、思考、感情、行動、興味関心、対人関係などに障害をきたす疾患です。

症状は極めて多彩ですが一般には、陽性症状として妄想、幻覚、思考障害、自我障害があげられる。
また陰性症状としては、引きこもり、感情の平板化、無関心といった症状と対人関係の偏狭さや

極端な敏感さがあげられています。

統合失調症の正確な原因は、まだはっきり分かっていませんが、脳の機能に障害が起こり、働きが阻害され発症する病気であることが明らかにされつつあります。

原因と思われるのは「ドーパミン」だけではありません。
日常生活において、脳は身体の内外からいろいろな影響を受けています。
怪我をした痛みといった身体的刺激、学校生活・社会生活から生じるストレスなども、少なからず統合失調症の引き金といわれています。

治癒に至る症例と、軽症型において薬物を服用していけば、社会生活を維持できると考えられていますが、残りの50%の慢性的な経過の患者群の改善が大きな問題となっています。

入院をするほど重症ではないケースの場合は、興味や積極性を改善したり、対人緊張を改善したりする必要があります。
一方薬物治療と合わせ中程度および重度の患者群は、疾病ハンディキャップや社会的ハンディキャップによる多くの喪失体験をしているためにその援助をこころがけることが大切です。

中程度の症状であれば、治癒対策として

心理療法
患者の状態に合わせ、心理・精神面をフォーカスした心理的サポート。
カウンセリングを行います。

社会訓練
社会復帰、自立に向けての準備。また学校生活、家庭生活など、元の環境に戻れるようにトレーニングする。
一般的に急性期を経た患者に対して行う。

そのほかには、

運動療法、食事療法、治療的レクリエーションなど、病院や支援施設によってさまざまな療法を採用している。無理をせず、自分に合ったものを選ぶのが効果的です。

統合失調症の症状は多彩なため、全体を理解するのが難しいのですが、ここでは幻覚・妄想、生活の障害、病識の障害の3つを示します。

幻覚と妄想は、統合失調症の代表的な症状です。
幻覚や妄想は統合失調症だけでなく、ほかのいろいろな精神疾患でも認められますが、統合失調症の幻覚や妄想には一定の特徴があります。
幻覚と妄想をまとめて「陽性症状」と呼ぶことがあります。

幻覚とは、実際にはないものが感覚として感じられることです。
統合失調症で最も多いのは、聴覚についての幻覚、つまり誰もいないのに人の声が聞こえてくる、ほかの音に混じって声が聞こえてくるという幻聴(幻声)です。
「お前は馬鹿だ」などと本人を批判・批評する内容、「あっちへ行け」と命令する内容、「今トイレに入りました」と本人を監視しているような内容が代表的です。
普通の声のように耳に聞こえて、実際の声と区別できない場合、直接頭の中に聞こえる感じで、声そのものよりも不思議と内容ばかりがピンとわかる場合などがあります。
周りの人からは、幻聴に聞きいってニヤニヤ笑ったり(空笑)、幻聴との対話でブツブツ言ったりする(独語)と見えるため奇妙だと思われ、その苦しさを理解してもらいにくいことがあります。

妄想とは、明らかに誤った内容であるのに信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない考えのことです。
「街ですれ違う人に紛れている敵が自分を襲おうとしている」(迫害妄想)
「近所の人の咳払いは自分への警告だ」(関係妄想)
「道路を歩くと皆がチラチラと自分を見る」(注察妄想)
「警察が自分を尾行している」(追跡妄想)
などの内容が代表的で、これらを総称して被害妄想と呼びます。
時に「自分には世界を動かす力がある」といった誇大妄想を認める場合もあります。
妄想に近い症状として、
「考えていることが声となって聞こえてくる」(考想化声)
「自分の意思に反して誰かに考えや体を操られてしまう」(作為体験)
「自分の考えが世界中に知れわたっている」(考想伝播)
のように、自分の考えや行動に関するものがあります。思考や行動について、自分が行っているという感覚が損なわれてしまうことが、こうした症状の背景にあると考えられることから、自我障害と総称します。

 

統合失調症の幻覚や妄想には、2つの特徴があります。
その特徴を知ると、幻覚や妄想に苦しむ気持ちが理解しやすくなります。

 

1は、内容の特徴です。
幻覚や妄想の主は他人で、その他人が自分に対して悪い働きかけをしてきます。
つまり人間関係が主題となっています。
その内容は、大切に考えていること、劣等感を抱いていることなど、本人の価値感や関心と関連していることが多いようです。
このように幻覚や妄想の内容は、もともとは本人の気持ちや考えに由来するものです。

2は、気分に及ぼす影響です。
幻覚や妄想の多くは、患者さんにとっては真実のことと体験され、不安で恐ろしい気分を引き起こします。
無視したり、ほうっておくことができず、いやおうなくその世界に引きずりこまれるように感じます。
場合によっては、幻聴や妄想に従った行動に走ってしまう場合もあります。
「本当の声ではない」「正しい考えではない」と説明されても、なかなか信じられません。

                                     (厚生労働省ホームペーより)

 現代社会において,大学生は多くの心理社会的刺激にさらされ日々ストレスを抱え生活している(橋本,2000)。
「学生の健康白書2005」によると20年前に比べ休学率も退学率も増加しており,その中の529人の休学の理由となっている精神障害の内訳としては,気分(感情)障害が52%とその中の半数以上を占めている。
また「体の調子は良い」と答えた大学生が,83%であったのに対し,精神的な面では,「なんとなく不安になる」が44%,また「人との関係で傷つくのが怖い」と思っている学生が52%という結果がある。
このように身体的な健康に対して,精神面での問題における学生の不安定さが指摘されている。
また大学生においてはかなり多くの学生が心理的問題を抱えているという報告があり(福田,2000),学業上の問題,対人関係,金銭面,将来の不安など原因となる要素は,かなり多い。
そして大学生に発症しやすい具体的な疾患として,統合失調症,うつ病,神経症,摂食障害,境界性パーソナリティー障害,アパシーや不眠や生活リズムの乱れや,頭痛,めまい,耳鳴りなどの愁訴が挙げられている(福田,2000)。
大学生においては,身体的な問題よりも心の問題での健康に関しての悩みが多く,内面に多くの心理的な葛藤を持っていると言え,また社会的,環境的変化へも直面していながら社会環境は,近年めまぐるしく変化しておりインターネットや携帯電話の普及等で便利になる一方で,コミュニケーション能力の低下が懸念されている(橋本,2000)。
そういった激しく変化しているそういった社会生活状況下で,改めて大学生の精神的健康について考えさせられる。

大学生の精神健康に関する研究 1
従来の青年期における精神健康に関する研究では,損なわれた心的機能の治癒という観点から,無気力感やストレスの認知・反応・対処など精神的な不健康さからのアプローチが多く見られた。
しかし近年否定的な側面からだけでなく欧米では,健康な心的機能の維持や才能・資質を伸ばすといった,「いかに精神的に健康か」という肯定的な側面にもっと注目した研究を進めようという動きが広まっている(Seligman,1998)。
現在日本における「いかに精神的に健康か」という肯定的な側面に焦点を当てた研究は,自尊感情を用いることが一般的である。
しかし社会適応の観点から捉えようとする場合,自尊感情のみで精神的健康の指標にすることは疑問であり他の健康指標との検討も必要である。
三浦・青木(2009)では,「大学生活の評価」において満足度が低い学生は,GHQ得点が高い,すなわち健康度が低い傾向にあった。
また「食事の不規則性」「自主休講あり」「起床時刻の不規則性」はGHQの高得点に寄与しており,不規則なライフスタイルは精神的健康度を低くすることが示された(三浦・青木, 2009)。
また大学生の食生活を中心とした生活習慣と精神健康との関連性での研究 (富永・清水・森・児玉・佐藤, 2001)の結果,肉類,牛乳,乳化製品,野菜類の低摂取頻度群は,精神的健康度が低い傾向にあることが示された。
また精神健康度とUPI得点(精神健康度が低いと高得点)と現在の健康状態は男女ともに負の相関が,さらにストレス度とは正の有意な相関が認められた。
また、女子においてはUPI得点と熟睡度,就寝時間に有意な負の相関が認められた。
さらに友人関係などの相談相手の相談の有無が精神的健康に与える影響については,相談相手がいない者が有意に高得点,すなわち精神的健康度が低いことが示された。

その他精神健康と関連がある要因として,自己高揚的な自己認知があげられる。
本人の精神面の健康や自己認知との関係性については,自己をポジティブに捉える方が相対的に健康であることが示されている(外山・桜井,2000)。
しかしその因果関係の特定が不十分であるため,縦断的研究と実験手法によって,自己認知と精神的健康の因果関係を, より明らかにすることが今後の課題とされた。
また精神的健康状態と関連の強いライフスタイルには,性差があることが示された(上岡・佐藤・斎藤・武藤,1998)。
男子では,全身持久力,規則性のあるライフスタイル,大学生活の充実ぶりが大きく関与している。
女子では,大学生活そのものの評価がもっとも重要であり,健康への不安も大きく関与している。
また過去に多くの自然体験を行っている者は,現在の社会適応力があり,まわりからの情緒的支援の認知が高く特性不安が低かったことから,精神健康にも良い事が明らかになった(小林・宗像, 2002)。

女性の健康についての免疫学的研究では,男性に比べ女性の精神障害有病率が高いことが示されており(Kesler,McGonagle,&Zaho,1994),北米における最大規模の精神科地域調査(Epidemiologic Catchment Area Study)でも,うつ病と気分変調障害において女性の生涯有病率が男性の2倍近いこと,また女性の発病は青年期以降に多い事が同時に報告されている(Weissman,Bland,Joyce,Newman,Wells,&Wittchen,1993)。
これらのことからも成人女性の精神的健康の向上は,重要な課題であると考えられる。
未来への志向性については,過去がネガティブなものであっても,現在を充実させ,未来への志向性を持つことで,精神的健康度が良好に保たれることが日潟・斎藤 (2007)から示唆されたが,青年期の時間的展望の発達プロセスの解明には今後研究も必要である。
過去・現在・未来の出来事の意味づけを明らかにすることが今後の課題となっている。

現在までの研究の成果及び今後の課題と方向性について
三浦・青木 (2009)は

aル全体との関連を見ている研究は少ない。

c.多くの研究が精神健康の指標として抑うつ度を用いており,抑うつ度が低ければ精神的に健康であるとしている。

d.精神的健康に関連する要因としては,自己認知や自信感,志向性など,精神的な要素は挙げているがその因果関係は特定されていない。

e.学習意欲や学業成績,サークル活動,その他の活動と精神健康との関連を見ている研究は少ない,ことなどを明らかにしている。

精神健康の関連性は多田・濱野(2003)によれば,コントロールとコミットメントは精神健康を高めるという結果が得られている。
年齢や性別ごとの分析から大学生にとってコンシトロールが,中高年にとってコミットメントが精神的健康との関連が強かった。
青年期にある学生にとって,自分の努力が成績などの成果につながるという実感が強いという可能性がある。
一方で,中高年になると自分の努力が必ずしも良い結果に結び付かないという人生観を持ち合わせており,結果を求めるよりも,自分の置かれた状況に主体的に関わることで精神健康が高まるかもしれないといわれている。
一方,大学生に比べ多くの研究が進められている高齢者の健康について,「QOL向上の観点から見るには,抑うつ尺度だけでなく,主観的健康感,主観的幸福感,生活満足度,自尊感情などの指標の併用というより積極的な概念に基づく指標を用いることも有効(増地・岸, 2001)とされている。

健康状態を作り出す基盤としての感情果たす役割について。

感情という生物学的システムは,健康状態を作り出し,健康を維持する中心的な役割を果たしていると考えられる。
われわれ人間が備えている感情システムの性質と作用を理解することが
,健康の維持増進と生活習慣病を含む疾病の予防・治癒の鍵であると考えられる。

感情システムは本質的には,生命を維持するために進化したものであり,感情システムが適正に作動することにより健康状態が実現する(余語, 2007)

感情システムは生命活動を守る免疫システムであり,環境と生活体の関係に応じて,最適な反応モードを活性させ,問題解決を可能にしているように見える(余語, 2007)

ストレスと健康として,何世紀にもわたりさまざまな非物理的な現象−ヒステリー,うつ,神経衰弱,心配,緊張のような状態が疾患の原因やそれに寄与する要因になりうるものとして注目されてきた(Doublet, 2000)
またこれは
,生体が脅威を受けたときには,主として自立神経系による自働調整機能が働き脅威への対処と体内環境の安定性の回復が実現する。

1970年代以降は生物学的要因だけではなく心理行動要因や社会的要因が健康に寄与するとする仮説を検証する心身医学,行動医学,健康心理学,精神神経内分泌免疫学などの健康科学の研究が盛んになってきた。
ヘンダーソンとバウムは
(Henderson & Baum, 2005),健康の行動学モデルを提案している。
このモデルは
,ネガティブ感情が健康状態の維持や疾病の重要な役割を果たすものとして位置づけられている。
このモデルでは
,身体健康ならびに精神的健康状態に作用する主要な要因として,生物学的変化と行動の変化,そしてネガティブ感情に注目する。
中枢神経系において外的事象や内的事象の検出・解釈・診断がなされると
,生物学的変化とネガティブ感情状態が生じる。
生物学的変化とネガティブ感情状態はしばしば同時に行動変化を促す。

 健康に影響する個人の属性として,習慣的な行動パターンや敵意,楽観性,感情表出性などのパーソナリティ変数がある。
これらの個人差は
,遺伝子レベルの差異と学習経験によって形成される。
これらの個人差は
,遺伝子レベルの差異と学習経験によって形成される。たとえば,敵意は冠動脈の応答性や冠動脈心疾患の罹患リスクの高さと関係する(Smith & Ruiz, 2002)
また感情と行動変化については
,行動は,危険な事象や事態,あるいは否定的認知や身体的不快によってネガティブ感情状態が喚起すると変容しやすい。
ネガティブ感情を感じると
,生活体は問題解決のための対処行動を実行する。
対処が困難な状態が続くと生理学的覚醒状態が慢性化し
,コルチゾールやアドレナリンなどのホルモンの作用により内臓組織が損壊する可能性が高まる(余語, 2007)

パンクセップ(Panksep, 1998),人間を含む哺乳類の脳機能の比較神経科学研究にもとづき,感情は生命を維持するために進化した脳神経システムであると主張する。

たとえば食物,水分,温暖,性交,社会的交流などのポジティブな報酬は,欲望や希望期待といった感情を形成し,探索行動を促してきた。
他の典型的な環境要求には痛みと崩壊の脅威
,体表の炎症,拘束,欲求不満,社会的喪失がある。
痛みと崩壊の脅威は不安や警戒
,不吉な予感といった感情を形成し,恐怖行動を促す。
体表の炎症
,拘束,欲求不満は憎悪や怒りといった感情を形成し激憤行動を促す。
社会的喪失は孤独や悲嘆
,分離苦痛といった感情を形成し,恐慌行動を促す。
健康状態を作り出す基盤として感情が果たす役割は大きい。

ストレス反応が健康を脅かす認識が社会に浸透しているが,ストレス反応の先駆者たちがすでに指摘しているように,ストレス反応は生活体が環境欲求に対して体内環境の恒常性を維持するための適応促進反応であり,ストレス反応がすぐさま健康を脅かすわけでもない。

いま世界各国で感情と健康の関係を明らかにする研究をおこなわれている。

その中での研究の問題点の一部として,ネガティブ感情の急性反応と慢性反応,ポジティブ感情の急性反応と慢性反応がそれぞれに及ぼすインパクトを明らかにすることが求められる。
次に急性のネガティブ感情反応が慢性のネガティブ感情反応に移行するメカニズムを解明することが求められる。
そしてネガティブ感情とポジティブ感情の相対的活性あるいは不活性が生体におよぼすインパクトを明らかにすることが求められる。
最後にネガティブ感情とポジティブ感情のそれぞれの作用原理を踏まえて
,人を活かし,人生を豊かにするための生活技術を開発することが期待される(余語, 2007)

実際ポジティブな感情状態にある時どのような事が起こっているのであろうか。
またポジティブな気持ちになることはどのような影響を与えるのであろうか。
このような疑問に対しては現時点では明らかにされていない部分が多い。

しかしポジティブ感情が,私たちの幸せや幸福感,ウェルビーイングと関連していると考えられる。
ポジティブ感情として例えば
,幸せ,喜び,満足,興味,愛などがあげられる。
私たちはこれらのポジティブ感情を経験することによって
,たとえそれがその瞬間だけであっても,ポジティブな状態になる。
そして感情は主観的な経験で動機付けの働きをもち
,表情や行動反応,整理反応などの変化を伴うものである。

ポジティブな感情を経験することによって,注意の幅が広がってゆくまたターゲットに対する注意を向ける速度や識別反応などが報告されている(Fredrickson & Branigan, 2005)

つまりポジティブ感情を経験することにより様々なことに目を向けたり考えられたりするようになる。
そしてその結果身体的
,社会的,知的な個人資源を獲得し,形成することができるようになり対処能力やレジリエンスを高め最終的に健康やウェルビーイングを促進することにつながる(Fredrickson,& Joiner, 2002)といわれている。

フレドリクソンの拡張−形成理論から考えると,ポジディブ感情は,自己というよりもむしろ他者の方向に注意を持っていると思われる。
たとえば
,嬉しい気持ちの時には,より周囲に目が向いたり,他者とのかかわりが増えるということである。

従来から精神的な健康を維持するには,現実や自己について,正確に認識することが,重要であると考えられてきた。
先行研究の中では、精神的健康の問題を,認知的アプローチの面から探る研究が増えている。
そうした研究の中で特に注目されるのが,「楽観的に自己に都合の良いように傾いた認識こそ,人が適応的に生きていく上で必要である。」とする。
ポジティブイリュージョン(positive illusion)の考え方である。
(Taylor&Brown,1988)がポジティブに傾いた自己概念を持っていることが,精神的健康につながるという,あらたな精神的健康感を提唱した。
ポジティブイリュージョンとは,「実際に存在するもの・ことを,自分に都合よく解釈したり,想像したり,イメージしたりする概念」と定義される。
Taylor&Brown(1988)は,ポジティブイリュージョンを自分自身をポジティブに考える、
自分の将来を楽観的に考える、外界に対する自己の統制力を高く評価する、というこの3つのポジティブイリュージョンが、精神的健康に結びついていると結論している。
また非現実的な楽観主義は,ポジティブな結果は自分に生じやすく,ネガティブな結果は他者より生じにくいという認知的なバイアスを意味する。
こうした認知的傾向を示したのはワインシュタインで(Weinstain,N.D.,1980)である。
ワインシュタインは,良い仕事に就く,自分の家を持つなどの18のポジティブイベントな事象と,心臓病になる,離婚するなどのネガティブなイベントについて,自分自身について生じる比率と他者に生じる比率の評定を被験者に求め,その差を検討した結果,ポジィティブな事象に関しては生起可能性や望ましさが高いほど自分に生じやすいとみなし,ネガティブな事象に関しては,コントロールが可能で特定の人にしか生じないというステレオタイプ的な認知を持つほど,自分に生じにくいと考えることが示された。
またTaylor & Brown (1988)は,被験者に対して癌などのネガティブイベントが,一般的な人と比べどれぐらい起こりにくいかということに評定を求めた。
その結果大多数の人が,自分は平均より上であるとみなしたが,多数の人が,他人より優れているということは論理的に不可能なことであるので,「イリュージョン」という言葉が使われている。
実際,楽しい気分や高揚した気分といったポジティブな気分の時には,ネガティブな感情価持つ記憶よりもポジティブな感情価を持つ記憶の方が想起されやすい。
一方悲しい気分や抑うつ的な気分といったネガティブな気分の場合には,逆にネガティブな記憶の方が想起されやすいことが明らかにされている(Bower, 1981)。
1990年代には,ポジティブな精神機能が多く研究されるようになってきた。
すなわち健康的な人には,自己を良きものと考え,自分の未来を明るく描き,自己の統制力を強く信じる傾向がみられるというのである。自己認知と精神的健康は,結びついていることが示され,自己高揚的な認知をしている人は,より健康的に生活している(外山・桜井,2000)ということも明らかにされている。

認知心理学と感情心理学領域では,ネガティブな感情と認知機能の研究に引き続いて,

ポジティブな感情と認知機能についても興味が持たれるようになってきた。
また
(Seligman, 1998)の主張は,人間を外的な影響を受動的に受ける傷つきやすいものと考えるのではなく,いきいきと人生を築いていくことを目指して,環境に対して積極的に働きかけてゆく楽観性を持ち,自分の人生に対して責任のある存在を見るという観点の重要性を主張している。
また
(Snynder & Lopez, 2002)は,人生の中の悪い事を修復するのに没頭するだけではなく,人生における最良の特質を築くことに集中し主観的レベル,個人的レベル,集団的レベルにおいてそれぞれポジティブなものに焦点をあてることであると述べ、例えば,ポジティブな主観的経験のレベルでは,ウエルビーイングや満足とか,現時点でのフロー感や,喜び,感覚的な楽しみ,幸福,また未来については,オプティミズムや希望や信仰など建設的な認識が大切であるという。

一方ネガティブな感情の生起は,血圧,脈拍などの自律神経系反応の亢進をもたらし,その持続は心身の健康に悪影響をもつと考えられ,ストレスに遭遇した時,生体は血圧が上がり,脈拍は速くなり,呼吸は速くなり骨格筋への血流量は増加するが,末梢への血流量は減少する。
またアドレナリンが放出される。こうした反応は,緊急反応
(Cannon, 1929)と言われている。
また
(Mayne, T.J., 1999)は,ネガティブ感情が身体的健康に与える影響について展望しネガティブ感情に関係した交感神経の活性が疾病を促進する可能性があることを指摘している。
特に敵意や怒りといったネガティブ感情が心筋梗塞などの心臓血管系疾患と関係がありそれ以外にも抑うつは,免疫機能を抑制し癌の進行を速める
(Temeshock et al .,1985)ということも報告されている。
これまでストレス刺激が免疫機能に有害な影響を及ぼすのではないかとする考え方から多くの研究が進められている。
ストレスとのかかわりのなかで最も重要な役割を担っているとされるのが
NK細胞である。
ある種のがんに有効な免疫療法剤として知られているインターフェロンは有効な地ュ洋節因子であり
,NK細胞の増殖や分化を促進し,NK細胞の標的細胞に対する殺傷能力を増強させることがしめされている。
キーコルト・グレーサーら
(Kiecolt-Glaser et al., 1984),医学部学生の最終試験時のストレス状況が学生らのNK細胞の活性化低下と関連していることを発見している。

私たちが健康で活力ある日々を過ごすためには,ポジティブな心身の状態を確保していくことは重要である。
しかし常にポジティブな状態で入れることは難しい。

であるからこそ,苦境やネガティブな状態に陥った時にそれにとらわれることなく,ポジティブな感情を喚起あるいは回復出来るかが重要になる。ストレス状態が免疫系に有害な状況を及ぼすというのであれば,反対にポジティブな感情状態,前向きな認知傾向あるいは積極的行動を取ることが免疫系に有益な影響を与えるということも考えることができる。

最近の脳科学的知見では,笑いによって大脳基底核が刺激されることによって神経伝達物質のドーパミンが放出され,NK細胞を活性化させるのではないかという仮説が提出され,笑いは唾液中の免疫グロブリン抗体の増加,血圧降下などの生理的変化を生じさせることが指摘されている(Lefcourt, 2002)

(平尾・山本, 2008)は,ポジティブライフイベントに対する認知の違いによって精神的健康(自尊感情,抑うつ,ストレス反応)や性格特性についてどのような違いがあるかを検証している。
その結果ストレス反応において
,ポジティブライフイベントについてポジティブな
認知をする高群の方が,低群に比べ有意に低いということが得られている。

新しい知見のひとつとして社会不安者の顔表情に対する弁別・注意などに関する研究の発表について、ヨーロッパ認知行動学会より(EABCTより) 

オランダのラドバウト・ナイメーヘン大学のグループで、社会不安者の表情弁別に関する研究について発表していました。
その発表では、高社会不安者は、相手の表情をより嫌悪的に解釈する傾向にあることを示していました。

顔表情は、6種類に分類されるといわれているが、(喜び・怒り・驚き・恐怖・悲しみ・嫌悪)多くの研究で社会不安者は、特に嫌悪的な表情処理に特徴が見られるはずだと議論がなされていました。

それというのも、嫌悪表情が相手に対する拒絶や屈辱を想起させるため、他者からの否定的な評価に敏感で、強い恐怖を抱いている社会不安者にとって、嫌悪表情は特別な意味を持つと考えられるということです。

しかし、これまではっきりとした研究結果は、得られていなかった印象を受ける。

今回聞いた発表内容は、比較的きれいに嫌悪表情に対する特異的処理が示された希有な内容といえ今後の研究の参考になるということです。

生活習慣病は現在,中高年のみならず、小学生においても出現しており、肥満や高脂血症者の将来的な健康問題は、切実となっている。

今日糖尿病患者も増え続けており、生活習慣病に関しては、発症後の対応ではなく、青少年期からの適切な運動や食事管理が重要であることが,指摘されている(門田,2002)

また運動が月2回以下,生活が不規則,朝食を毎日食べない,という生活習慣があるほど

精神的健康度が低いことが示されている(伊藤・津田・山本・石川, 2005)。

それには大学生の頃からの一次予防の認識は望ましいと考えられ実際の生活習慣の状況と心の健康度との関係も検討が必要となっている。

またストレス問題に関しては,特定の13個の健康習慣の内(ここでは割愛),4個から6個の悪い健康習慣を持つ者の抑うつ発症率が高く,悪い健康習慣がよくうつ状態に独立して寄与する。
すなわち,生活習慣が身体的健康同様,精神的健康にも影響する(
Fredrichs & Clark, 1988)という結果が得られており,医学,医療の場では,生活習慣が深く関わる生活習慣病やストレス病への対策が求められている。

特に心身的に充実させていく時期にある大学生を対象に精神健康度を生活習慣から検討していくことが必要。

健康づくりの意識について(小笠原・渡邊・煙山,2005)は,「するほう」「どちらかと言うとする方」を合わせた「積極群」は,中年者が44.6%,高年者が68.8%で高年者のほうが積極的に健康づくりを行っていることが明らかになっている。
また、
20以上の男女の調査では,若い世代ほど「健康に気をつけていない」人の割合が高い傾向にあると報告している。
健康づくりに対する影響要因は
,中・高年者ともに類似しており,「性別」「主観的健康感」「階層帰属意識」が抽出され,さらに女性では主観的健康感が良いと感じ,かつ経済的にゆとりを感じている人では,健康づくりにより積極的である傾向が伺える。
これは
,女性のほうが美容に関心が強く,「美容のため」という要因が積極的に健康づくりを行うことに影響する一因であると考えられる。

また運動・スポーツについては,2001年の東京都の調査で運動・スポーツをしない理由として,30代では「忙しくて時間がないから」「仕事や家事出疲れているから」があげられていた。
健康維持のために食生活で心掛けていることについて比率の高さをみると
,中年者・高年者ともに1位が「朝食を摂る」である。また中年者では5割以上,高年者では,9割以上が
「塩分を控える」と回答している。

いままで生活が不規則,趣味がない,多忙,定期的な運動をしない,睡眠時間が適正でない,

食事が不規則,朝食を摂取しない,栄養のバランスを考慮しないなどの生活習慣が,主観的なストレス量やうつ度の上昇に影響を及ぼすことが複数の研究で明らかになっている(川上・原谷・金子・小泉, 1987; 入江・宮田・三島・池田・平山,1997; 上岡・佐藤・斎藤・武藤,1998)

DSM−Ⅳ−TR 精神疾患の分類

米国精神医学会(APA)が作成したマニュアルです。

A. 以下の症状のうち 5 つ (またはそれ以上) が同じ 2 週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。
これらの症状のうち少なくとも 1 つは、(1) 抑うつ気分または (2) 興味または喜びの喪失である。
注:明らかに、一般身体疾患、または気分に一致しない妄想または幻覚による症状は含まない。


その人自身の言明 (例:悲しみまたは、空虚感を感じる) か、他者の観察 (例:涙を流しているように見える) によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。
注:小児や青年ではいらだたしい気分もありうる。
ほとんど 1 日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味、喜びの著しい減退 (その人の言明、または他者の観察によって示される)。
食事療法をしていないのに、著しい体重減少、あるいは体重増加 (例:1 カ月で体重の 5%以上の変化)、またはほとんど毎日の、食欲の減退または増加。
注:小児の場合、期待される体重増加が見られないことも考慮せよ。
ほとんど毎日の不眠または睡眠過多。
ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止 (他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの)。
ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退。
ほとんど毎日の無価値観、または過剰であるか不適切な罪責感 (妄想的であることもある。単に自分をとがめたり、病気になったことに対する罪の意識ではない)。
思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる (その人自信の言明による、または、他者によって観察される)。
死についての反復思考 (死の恐怖だけではない)、特別な計画はないが反復的な自殺念慮、自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画。


B. 症状は混合性エピソードの基準を満たさない。

C. 症状は、臨床的に著しい苦痛、または、社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。


D. 症状は、物質 (例:乱用薬物、投薬) の直接的な生理学的作用、または一般身体疾患 (例:甲状腺機能低下症) によるものではない。

E.ょ 症状は死別反応ではうまく説明されない。すなわち、愛する者を失った後、症状が 2ヵ月を超えて続くか、または、著明な機能不全、無価値観への病的なとらわれ、自殺念慮、精神病性の症状、精神運動抑止があることで特徴づけられる。


【出典】
American Psychiatric Association:Diagnostic and statistical manual of mental disorders 4th edition,Text Revision,2000 (高橋三郎、大野裕、染矢俊幸(訳):DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引,医学書院,2002)


 

うつ病は、気分障害のの中に位置づけられている。ここでは大うつ病のエピソードの記述について紹介します。

□大うつ病エピソード Major Depressive Episode

 以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化をおこしている。;抑うつ気分、興味または喜びの喪失を示す。

●クライアント自身の言明(たとえば、悲しみまたは空虚を感じる)か、他者の観察によって示される抑うつ気分。

●すべての活動における興味、喜びの著しい減退。

●著しい体重減少、あるいは体重増加(たとえば、1か月で体重の5%以上の変化)

●不眠または睡眠過多

●精神運動性の焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったとかという主観的感覚でないもの)

●易疲労性、気力の減退

●無価値観、または過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある)、(単に自分をとがめたり、病気になったことに対する罪の意識でない。)

●思考力や集中力の減退、または決断困難

●死についての反復思考(死の恐怖だけでない)。

症状によって著しい苦痛または、社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を起こしている。

当オフィスにおいてもこの症状のクライアントさんからのカウンセリングが増えてきました。

強迫性の症状の内容を紹介します。

強迫性障害(Obsessive-Compulsive Disorder; OCD)は不安障害の一型で、その病態は、強迫観念と強迫行為に特徴づけられます。

強迫観念は無意味ないし不適切、侵入的と判断され、無視や抑制しようとしてもこころから離れない思考や衝動およびイメージなどで、強迫行為はおもに強迫観念に伴って高まる不安を緩和および打ち消すための行為で、そのばかばかしさや、過剰であることを自ら認識してやめたいと思いつつも、駆り立てられる様に行う行為です。
具体的には、トイレのたびに「手の汚れ」を強く感じ、それをまき散らす不安から執拗に手洗いを続けたり、泥棒や火事の心配から、外出前に施錠やガス栓の確認を切りがなく繰り返したりします。
フロイトに始まる精神分析の中では、「強迫神経症」として精神分析的・心理学的見地から研究や臨床の対象とされ、精神力動論による成因理解がなされてきました。しかし1960年代以降は神経生物学的観点からの成因や病態の解明が進展し、さらにはSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)や認知行動療法の有効性が検証されるにつれ、神経症概念の範疇では捉えきれなくなってきました。
このため、1980年に改訂されたアメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-III において疾患名は「強迫性障害」に変更され、操作的診断基準によって疾患概念が明確化されました。
以後の研究では、とくに精神病理や病因、脳機能、治療など多角的観点から強迫性障害の多様性が注目され、強迫性障害を均一的疾患とみなすことの限界が明白となっています。
そのため、DSM-IVでは持続的に症状の不合理性に関する「洞察に乏しいもの」が、WHOが定める診断基準のICD-10では「強迫思考を主とするもの」「強迫行為(強迫儀式)を主とするもの」および「両者が混合するもの」というサブタイプがそれぞれ採用され、治療法選択や予後判定の基準として試行されています。

(厚生労働省ホームページより)


強迫性障害の主要な治療は、SSRIを主とした薬物、および認知行動療法です。

さらに病気自体や治療および対処などについて、クライアントさんや家族などに十分な理解をうながす心理教育は、治療的動機づけを高めかつ周囲からの一貫した支持を得て安定的治療環境を構築するうえで重要です

DSM-IV によるOCDの診断と評価

心理教育
症状の患者や家族の理解を高め、治療意志を強化する

薬物療法
認知行動療法
曝露反応妨害法

個々のクライアントさんの治療は、症状の特性や精神病理、治療的動機づけの程度などを考慮し選択します。
薬物療法と認知行動療法にはそれぞれメリット・デメリットがあり、たとえば薬物は、導入や継続が容易で即効性が期待される反面十分な反応が得られない割合が比較的高く、副作用や中断時の再発が問題となります。
一方認知行動療法は、より有効性が高く効果の持続性や再発予防に優れますが、導入やアドヒアランスには、患者さんの状態や動機づけの程度などが大きく関わり、その効果は治療者の経験や技量にも影響されやすいという問題があります。
実地臨床の多くでは、うつ病の併存などで認知行動療法は当初困難であり、薬物を先行させ、治療的動機づけを強化確認後、認知行動療法に導入するといった併用療法が一般的です。

曝露反応妨害法を用いることが多く、これまで恐れ回避していたことに直面化し(曝露法)、不安を軽減する為の強迫行為をあえてしないこと(反応妨害法)を継続的に練習します。
その効果には、洞察や治療的動機づけの程度が影響する為、予めこれらを評価し適応を判断します。
導入時には行動分析が重要であり、症状がどの様な場面や刺激により出現し、どの様な観念が生じて不安になるか、どの様な行為や回避を伴い、家族など周囲の巻き込みはあるか、日常や社会生活への影響はどの程度かなどを明確にして、治療目標を具体的に決めます。
課題設定は、通常不安階層表(ヒエラルキー)の不安値の低いものから順次行うが、患者さんがいちばん治したいもの、生活や社会的機能に関連し治療効果を実感しやすいものなどを、優先させる場合もあります。
当初はおおむね治療者主導ですが、自ら課題を考え、問題を分析し解決する方法を模索するなど、徐々に自己制御へ移行することが重要です。

(厚生労働省ホームページより)

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臨床心理学領域修士 
(発達臨床心理研究領域) 
 

早稲田大学大学院修了  

公認心理師
(心理職国家資格)

東京公認心理師協会
(旧東京臨床心理士会)

日本公認心理師協会会員
公認心理師の会会員

ストレスチェック実施者研修終了

日本認知療法学会会員
日本TFT協会セラピスト
臼井式レイキマスター
(ティチャー)
 
日本心理学諸学会連合認定

心理学検定 特1級
(心理10領域全取得) 

その他経歴
大学脳科学研究所

フリースクール研究ラボ
上場企業管理職等  

1962年生まれ
性格 温厚
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