大学生の精神的健康について1

大学生の精神健康に関する研究 1
従来の青年期における精神健康に関する研究では,損なわれた心的機能の治癒という観点から,無気力感やストレスの認知・反応・対処など精神的な不健康さからのアプローチが多く見られた。しかし近年否定的な側面からだけでなく欧米では,健康な心的機能の維持や才能・資質を伸ばすといった,「いかに精神的に健康か」という肯定的な側面にもっと注目した研究を進めようという動きが広まっている(Seligman,1998)。
現在日本における「いかに精神的に健康か」という肯定的な側面に焦点を当てた研究は,自尊感情を用いることが一般的である。しかし社会適応の観点から捉えようとする場合,自尊感情のみで精神的健康の指標にすることは疑問であり他の健康指標との検討も必要である。三浦・青木(2009)では,「大学生活の評価」において満足度が低い学生は,GHQ得点が高い,すなわち健康度が低い傾向にあった。また「食事の不規則性」「自主休講あり」「起床時刻の不規則性」はGHQの高得点に寄与しており,不規則なライフスタイルは精神的健康度を低くすることが示された(三浦・青木, 2009)。また大学生の食生活を中心とした生活習慣と精神健康との関連性での研究 (富永・清水・森・児玉・佐藤, 2001)の結果,肉類,牛乳,乳化製品,野菜類の低摂取頻度群は,精神的健康度が低い傾向にあることが示された。また精神健康度とUPI得点(精神健康度が低いと高得点)と現在の健康状態は男女ともに負の相関が,さらにストレス度とは正の有意な相関が認められた。また女子においてはUPI得点と熟睡度,就寝時間に有意な負の相関が認められた。さらに友人関係などの相談相手の相談の有無が精神的健康に与える影響については,相談相手がいない者が有意に高得点,すなわち精神的健康度が低いことが示された。
その他精神健康と関連がある要因として,自己高揚的な自己認知があげられる。本人の精神面の健康や自己認知との関係性については,自己をポジティブに捉える方が相対的に健康であることが示されている(外山・桜井,2000)。しかしその因果関係の特定が不十分であるため,縦断的研究と実験手法によって,自己認知と精神的健康の因果関係を, より明らかにすることが今後の課題とされた。また精神的健康状態と関連の強いライフスタイルには,性差があることが示された(上岡・佐藤・斎藤・武藤,1998)。男子では,全身持久力,規則性のあるライフスタイル,大学生活の充実ぶりが大きく関与している。女子では,大学生活そのものの評価がもっとも重要であり,健康への不安も大きく関与している。また過去に多くの自然体験を行っている者は,現在の社会適応力があり,まわりからの情緒的支援の認知が高く特性不安が低かったことから,精神健康にも良い事が明らかになった(小林・宗像, 2002)。