精神的健康について2

女性の健康についての免疫学的研究では,男性に比べ女性の精神障害有病率が高いことが示されており(Kesler,McGonagle,&Zaho,1994),北米における最大規模の精神科地域調査(Epidemiologic Catchment Area Study)でも,うつ病と気分変調障害において女性の生涯有病率が男性の2倍近いこと,また女性の発病は青年期以降に多い事が同時に報告されている(Weissman,Bland,Joyce,Newman,Wells,&Wittchen,1993)。これらのことからも成人女性の精神的健康の向上は,重要な課題であると考えられる。
未来への志向性については,過去がネガティブなものであっても,現在を充実させ,未来への志向性を持つことで,精神的健康度が良好に保たれることが日潟・斎藤 (2007)から示唆されたが,青年期の時間的展望の発達プロセスの解明には今後研究も必要である。過去・現在・未来の出来事の意味づけを明らかにすることが今後の課題となっている。

現在までの研究の成果及び今後の課題と方向性について
三浦・青木 (2009)はa.大学生の精神的健康は,大学生活を含むライフスタイルとの関連が強い,b.食生活や睡眠等の一部の生活習慣と精神的健康の関連を見ている研究はあるが,
ライフスタイル全体との関連を見ている研究は少ない,c.多くの研究が精神健康の指標として抑うつ度を用いており,抑うつ度が低ければ精神的に健康であるとしている,d.精神的健康に関連する要因としては,自己認知や自信感,志向性など,精神的な要素は挙げているがその因果関係は特定されていない,e.学習意欲や学業成績,サークル活動,その他の活動と精神健康との関連を見ている研究は少ない,ことなどを明らかにしている。
精神健康の関連性は多田・濱野(2003)によれば,コントロールとコミットメントは精神健康を高めるという結果が得られている。年齢や性別ごとの分析から大学生にとってコンシトロールが,中高年にとってコミットメントが精神的健康との関連が強かった。青年期にある学生にとって,自分の努力が成績などの成果につながるという実感が強いという可能性がある。一方で,中高年になると自分の努力が必ずしも良い結果に結び付かないという人生観を持ち合わせており,結果を求めるよりも,自分の置かれた状況に主体的に関わることで精神健康が高まるかもしれないといわれている。
一方,大学生に比べ多くの研究が進められている高齢者の健康について,「QOL向上の観点から見るには,抑うつ尺度だけでなく,主観的健康感,主観的幸福感,生活満足度,自尊感情などの指標の併用というより積極的な概念に基づく指標を用いることも有効(増地・岸, 2001)とされている。