感情と健康2

 健康に影響する個人の属性として,習慣的な行動パターンや敵意,楽観性,感情表出性などのパーソナリティ変数がある。これらの個人差は,遺伝子レベルの差異と学習経験によって形成される。これらの個人差は,遺伝子レベルの差異と学習経験によって形成される。たとえば,敵意は冠動脈の応答性や冠動脈心疾患の罹患リスクの高さと関係する(Smith & Ruiz, 2002)。また感情と行動変化については,行動は,危険な事象や事態,あるいは否定的認知や身体的不快によってネガティブ感情状態が喚起すると変容しやすい。ネガティブ感情を感じると,生活体は問題解決のための対処行動を実行する。対処が困難な状態が続くと生理学的覚醒状態が慢性化し,コルチゾールやアドレナリンなどのホルモンの作用により内臓組織が損壊する可能性が高まる(余語, 2007)

パンクセップ(Panksep, 1998),人間を含む哺乳類の脳機能の比較神経科学研究にもとづき,感情は生命を維持するために進化した脳神経システムであると主張する。

たとえば食物,水分,温暖,性交,社会的交流などのポジティブな報酬は,欲望や希望期待といった感情を形成し,探索行動を促してきた。他の典型的な環境要求には痛みと崩壊の脅威,体表の炎症,拘束,欲求不満,社会的喪失がある。痛みと崩壊の脅威は不安や警戒,不吉な予感といった感情を形成し,恐怖行動を促す。体表の炎症,拘束,欲求不満は憎悪や怒りといった感情を形成し激憤行動を促す。社会的喪失は孤独や悲嘆,分離苦痛といった感情を形成し,恐慌行動を促す。健康状態を作り出す基盤として感情が果たす役割は大きい。

ストレス反応が健康を脅かす認識が社会に浸透しているが,ストレス反応の先駆者たちがすでに指摘しているように,ストレス反応は生活体が環境欲求に対して体内環境の恒常性を維持するための適応促進反応であり,ストレス反応がすぐさま健康を脅かすわけでもない。